2021年の12月9日をけっこう楽しみにしていました。
特定の日を楽しみにするのは、久しぶりな感じ。
楽しみにしつつ、心配もしていました。
「浅草キッド」がNetflixで配信スタートする日。
北野(ビート)武の自伝的小説である、浅草キッド。
弟子のコンビ名でもある、浅草キッド。
名曲の題名にもしている、浅草キッド。
監督が「劇団ひとり」であるということが、とにかく心配だった。
芸人としての劇団ひとりは、まあまあ好きです。
面白いなーと思って、繰り返し見た時期もあるくらい。
ただ、最近は小説だの映画だのと”そっち(文化)”に行ってしまった感があり、ちょっとなーと。
しかし、その”走り”こそがビートたけしであり、北野武であり、たけしさんであると、思い出すきっかけにもなりました。
芸人が”そういう感じ”に進む、先駆けとなった人。
そして、未だにそこまでたどり着いている人はいない。
この映画を見て、なんとなくだけどその理由がわかった。
真人間ぶる芸人が増えたことに、怒りを隠せないたけしさん。
「芸人なんて、いい人でもなんでもない」
というのが、よく分かる映画だった。
もちろん、それだけではないけれど。
オチが分かっているだけに、感動物語だけで終わらなくてよかった。
僕は昔、たけしさんの熱狂的な信者と遊んでいた時期があって、その人の前で「たけし」と呼び捨てにすると怒られたので、敬称を付ける癖がついてしまいました。
更によく考えたら、たけしさんの監督作品も、ほとんど見ています。
あと、僕が「煮込み」と「チューハイ」にこだわる理由もなんとなく、”これ”なのかと。
そんな僕が、見た記録。
以下、絶妙なネタバレあり。
偉そうなこと言ってます。
個人的な感想なので、許してください。
全体的にとてもよかったです
あらすじはインターネットのどこにでもあるので、省きます。
面白かった。
正直、中身はあまりないです。
薄いです。
でも、よかった。
たけしさん役の割に彫りが深すぎるだろー
と思っていた柳楽優弥さんは、すごくハマっていた。
特に、襟足がよかった。
門脇麦さんも、いい感じに成長していた。
鈴木保奈美さんも、いい感じに歳をとっていた。
この映画を見た後だからこそ残念なのか、いいことなのか・・・
大泉洋はやっぱりコメディアンよりも、役者の方が向いていると思った。
きよしさん役のナイツの土屋さんもよかった。
ただ、この作品はやはり柳楽優弥に尽きるでしょう。
猫背でフラフラしている感じとか、”たけしさんの若い頃感”がしっかり出てた。
大泉洋扮する「師匠」に「やめます」と伝えに行く時とか、すごくよかった。
話の内容は、予想通りの感じ、というか原作もあるし、過去に起きて分かっていることだし。
ただ「たけしさんがまともなこと言っている」という画は、意外と斬新だった。
売れて帰って来たたけしさんの漫才を見る門脇麦は、「男を見る女」の傑作でしょう。
あと、予告編にも出ちゃってるんだけど、クライマックスの”スロー”の使い方が、マジでいい。
超単純なエフェクトを、超効果的に使っていますね。
あと、主婦の買い物袋には「長ネギ」が入っていなければいけない、入っているべきである、ということを改めて確認。
「浅草キッド的なもの」はこれで一回終わりにしよう
浅草キッドみたいな話
芸人の感動物語
みたいなものは、これでひと段落つけて欲しいなと。
ちょっと、最近多かったですね。
エンディングとか挿入曲で浅草キッド流しとけばいい、みたいな世間の雰囲気もあった。
「たけしさんに許可もらって~」みたいな話まで、セットになっていた。
それって、たけしさんが違和感を感じていたものに他ならないのでは?と。
芸人使って感動させちゃダメだろと。
まあ、浅草キッドはいい曲ですよ。
カバーされたりもしていますが、やっぱり本家が一番いいですね。
YouTubeにあったやつ、貼らせてください。
こっちもいい。
これが、”芸”です。
「鯨」です。
でも、そんなことで感動してはいけないのでしょう。
向こうは「見せてやっている」という態度であり、それを隠していないことが分かる映画がせっかくできたわけだし。
何が本当なんだろう?
本当のあの人はどんな人なんだろう?
本音なのか建て前なのかわからせないのが、芸人だろうと。
とにかく、けっこうよかったです。
見た方がいいですよ。
インコは何かのメタファーなのかな、と思ったら、そうでもなかったですね。
ストリップの前にマジ歌を歌って客に「早く脱げ」って言われた後の、切り替えの早さが時代だなーと思った。
ふと、ネズミを素手で潰している祖母を思い出した。
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